磯の魚や淡水魚などの臭みとりの秘訣!クセを旨味に変える元割烹料理人が伝授する方法2つ

チヌなど磯の魚や川魚料理の臭みとりや下処理の方法をお伝えします!

臭みと感じる磯臭さと言われるものは凝縮された旨味の一部でもあります。気になる臭みをひと手間加え美味しさに変える!元日本料理人の技が生きる磯の魚(チヌやグレ)や淡水魚を料理する際に欠かすことのできない臭みとりの方法を教えます。

その特有の臭みは好きなもにはたまらないのですが、鼻につく人には気になってそのままでは口にできません。それが普通ではやらない工夫で意外な美味しさにも変貌させることができます。

一般的に磯臭いとか、泥臭いと言われる淡水魚など匂いを美味しさに変える元料亭で働いていた料理人がその下処理で大事な「臭みとり」のやり方をご紹介します!

魚の匂いのヒミツ

チヌなど磯の魚は元々海底の底付近におり、底にいる甲殻類(カニやシャコ)を、または海藻がある場所と同じようなところに生殖しているカキやイガイ、フジツボが好物で、これらを主にエサにしているので特有の「磯臭さ」と呼ばれる臭いがついています。

僕とか気にならないというか好きな人にとっては、それら磯臭さがさらに淡白な白身の美味しさをさらに旨味を補い引き立てているように感じているわけですが、気になる人は気になって口にできないってことも…。

また、淡水のコイやニゴイ、フナ、ウグイ、ナマズやブラックバスなどの淡水魚も独特の匂いがあります。育った川や池の水質によることが多く、底の砂や泥ごとエサを吸い込むことで匂いがついてしまっています。

不味いのは魚のせいだけではない!

臭くて不味い魚料理は下処理の失敗が8割!!

育った環境にもよるのでヘドロいっぱいの下水域で育った魚はどれだけ洗浄しても身まで浸透しているので無理ですが、そこまでのよほどの水域ではない限り適切な下処理を丁寧にやっていれば8割がたなんとかなるんです!

ですが、それはちゃんとした下処理=(臭みとり)を必ず行っていれば大丈夫なのです。

手順よく、美味しい料理にするための手抜きをしない最善の方法があります。

この工程を手を抜くと、好きな人には磯臭さや、川魚特有の匂いなど独特の旨味を生んでいるものと感じるのに、嫌いな人には不味いという判断に直結してしまいます。

それらを上手に丁寧に下処理を行うと魚本来の味を損なわずに美味しい料理に大変身します。

匂いを残さないための締め方、血抜きの仕方

魚をできる限り新鮮なまま持ち帰ることがいちばんの魚の匂い消しには肝心です。

方法は、釣った直後とか持ち帰る寸前の準備で鮮度を保つことが可能です。

締める

釣ってからまだ生きている間に魚を締めることでそのままの鮮度が保てます。

身が生きている状態の目安は死後硬直しておらず身がぶらぶらの状態です。
このときに魚体の神経筋である頭の上と尾に切り目を入れて締めます。

血抜き

あれば真水で、流水にさらしながら身から出てくる血を洗いがなすように抜き取ります。

真水がなければバケツに冷たい海水をくんで切目を入れた頭を下にして水につけて血抜きします。

漁船などでいけすがある場合は、切り目を入れてから水の中に放っぽり投げていても港につくまでに血が抜けています。

ここ数年で急速に広まった津本式と呼ばれる究極の魚の下処理の方法も取りれてみてもいいかもしれません。

臭みとりの方法:①皮目

魚料理を左右することのある独特の匂いの原因の多くは皮目と腹骨(腹ワタを覆っている箇所)にあります。そこを適切に洗い塩もみすることで匂いの原因となるヌメリと余分な血合いなどが除去できます。

皮目を塩で揉む

塩をする、魚の皮目の臭みとり①|磯の魚や淡水魚などの臭みとり

うろこを落とし、腹ワタとエラを取り除き終わったら

身に包丁を入れる前に下処理の工程に入ります。

臭いと感じる原因のほとんどはこの皮目にあるんです。

まずは頭から下の部分から尾のあたりまでまんべんなく振り塩をしていきます。

特に汽水域でのチヌ(クロダイ)や、コイやフナなどはこの処理の仕方が料理の味を大きく左右します。

↓基本的なさばき方は別ページをご覧ください↓

塩をすりこむ、魚の皮目の臭みとり②|磯の魚や淡水魚などの臭みとり

塩の量は、少し多いかなと思うくらいの量でかまいません。

たっぷり目に振ったら手の指先をつかって全体を塩で揉んでいくのをつづけます。

このときに手に感じるヌメリこそが臭みの原因

塩で揉むことによってこのヌメリが取れます。

洗い流す、魚の皮目の臭みとり③|磯の魚や淡水魚などの臭みとり

ひととおり身の部分の全体を塩で揉んだら流水にさらして塩といっしょにヌメリをきれいに水で洗い流します。

ここまでがチヌの磯臭さを独特の風味に変えるにいちばん必要な最初の下処理の工程です。

これはアカエイやウナギ、アナゴなどのヌメリ取りにも応用できます。ヌメリが多い底モノの魚の場合は洗い流す際にお湯で流し、流水にさらすときれいに取れます。

皮目に塩を刷り込み洗い流す
ヌメリが強い場合、塩をした後お湯で流し、流水にさらす

皮目の美味しさまで十分に味わえるおすすめ料理がこちら↓

臭みとりの方法:②”腹”

次に腹、ここは食べたエサ、エサの食べ方(砂ごと飲み込んでいるかどうか)などの影響を受ける部分です。

下の写真は腹とエラを取り除いただけの状態です↓

洗浄前、臭みとりの方法:②”腹”|磯の魚や淡水魚などの臭みとり

この時は酷くお腹が汚れている個体で、ここまでのは稀ですが、今回は解説するためわかりやすいようにこの魚のときのを用いました。

手で腹骨の上の黒い薄皮を少しだけ剥がしましたが、まだ下処理としては不十分です。

流水にさらしながらブラシでこすって洗います。きれいになるまで続けると・・・↓

洗浄後、臭みとりの方法:②”腹”磯の魚や淡水魚などの臭みとり

ここまでキレイにブラシでこすりながら流水にさらすと、ほぼ腹の臭みはなくなります!

浮き袋を覆っている膜を取り除き、包丁で腹骨のあたりまで切り込みを入れて洗うのがコツです。そうすることで匂いのある血合いまできれいに出来ます。

浮き袋の膜を取り除き腹骨まで包丁を入れ開く
流水にさらしながらブラシでこする
ブラシだけで取り除けない血合いや内側の薄い膜は手で取り除く

割烹などの調理師は茶筅で洗ったりしますが、僕たち一般人は茶筅がもったいないので専用ブラシを使いましょう。

大阪漁具 OGK 魚の内臓取りブラシ

早川工業 内臓取り ササラ

このように、しっかりと腹骨は腹ワタを取ったあとに生臭さの原因となる、血合いやしっかり取り除き、流水にさらしながらブラシや茶筅(プロの日本料理人は茶筅で魚の腹を洗う)で、必ず洗ってください。

どのような魚でも、刺身で食べる際はもちろん、丸ごと一尾使う料理にも、この方法は必須です。

部位ごとにさらに美味しくする下処理

腹骨などの匂い消し

腹骨などを料理に使う場合は、一度軽く振り塩して寝かせて、水洗いをしたのちに用います。

腹骨などの臭みとり

基本的に吸い物(潮汁)などは、この工程をやるのが料理人としては定石です。

■煮付けや酒蒸しにする際の下処理

魚の頭の臭みとり

煮付けやなどカマや頭を使って水けを加えて煮る料理にも当然臭みとりは必要です。

甘辛く煮付けにするときも生臭さを抑える下準備は大事です!!

この頭やカマの下処理で洗い流す際はお湯で流すと、取り切れなかった小さい鱗も同時に剥がせます。

この工程を怠ると臭いまま火を通し続けることになるの要注意!

炊き込みご飯などにする場合もこの方法は有効です。

魚だけのせいにしない!臭みとりは肝心

文中でも同じことを言いましたが大事なことなのでもう一度言います。下水のような場所で育った魚でない限り、臭い魚料理で不味いと感じるものは、ほぼ8割がた下処理でなんとかなります!ちゃんと臭み取りをやっておきさえすれば大丈夫なことがほとんどです。

何もしなくてもはじめから美味しい食材を使えば、美味しくなるのは当たり前でして、それに越したことはありませんが、ある一定の魚に対して適した臭みとりをしないまま「あの魚は臭い」と決めつけてしまうのはあまりに勿体なさ過ぎます!

ここで行った方法は料理人にとっては基本中のキホンで、何一つ気張ったり難しいことではありません。魚のせいだけにせず、釣りと魚料理がどちらも好きな人にはぜひ覚えておいてほしいと切に願います。